人生セルフ人体実験

何をするにしても自分で試すのが一番

鬱病になった話と、寛解してから困ったこと

突然ですが、鬱病経験者のわたしです。
(別にTwitterでは公開してたし、隠す気もないんですが)
今から2年半ほど前に、なんやかんやがありメンタルをやってしまったんですが、治療中~その後の記録なんかを断片的にでも残しておくと、誰かの役に立つこともあるかなぁと思ったので、書き残しておきます。
メンヘラ大国ニッポンですし。

メンヘラのはじまり

最初に精神的な不調を感じ始めたのは、2016年も暮れかけた頃でした。
理由はまあ、様々な要因が複雑に絡み合ってたと思うのでなんとも言えないのですが、そのうちいくつか、特に仕事の面で引っかかる部分をピックアップすると、
・職場でのメインの業務内容が、入社した頃とだいぶ変わっていた(書類やPCの上のドキュメント、経理業務の数字とひたすらにらめっこする時間が多かった)
・かと思うと、突発的に入った業務はだいたい自分に振られるようになってきていた(基本的に事務所常駐かつ車の運転を出来る人が他にいなかった)
・休日にも緊急対応案件の召集が入ることが多々あり、気が休まる時間がなかった(休日ごとの待機当番制みたいなのは無かった)
・そこにきて緊急案件が続いて16連勤をこなした直後だった(もちろん残業マシマシ)
・そもそも社長の性格、思想や経営方針が自分と完全に合わなかった
というあたりでしょうか。
そんなわけで、年末年始も特に最低限の外出(初詣とか)以外は家でネットをしてるだけの状態。
そして年が明けて2017年になって間もなく、まずは食欲不振、睡眠障害(この頃は主に不眠)、得体の知れない不安感や焦燥感に襲われるようになりました。

我慢した

それから1週間くらいしても、状態は良くなるどころか悪化の一途を辿るばかり。
夕食だけは親に心配させまい、感づかれまいと、「仕事で疲れた」ことにして量は減らしながらも食べていましたが、朝はinゼリーみたいなののコンビニで100円のやつ、昼はカロリーメイトを無理矢理齧る、という状態に。
そのうち寝付きが悪いどころか、外が明るくなっても眠れなくなり、他にも読書ができなくなったり(小説どころか漫画もダメでした)、「楽しい」とか「面白い」っていう感情が行方不明になってしまいました。
この時点で最初の不調感から1ヶ月程度。さすがにこれはまずいと思い、夜間もやってる(=仕事の後に行ける)心療内科を探して電話で予約。
精神科・心療内科は初診まで1~2ヶ月かかるという前情報に若干絶望していましたが、なんとかちょうど都合が良く1週間後にねじ込んでもらうことに成功しました。
ちなみに、自分自身メンタルヘルスに対する悪いイメージが強かったので、心療内科に電話するまで3日悩みました。正直これが最大の壁だったかもしれません。

心療内科にかかる

予約当日。
向かった心療内科は地元の都心部某所にあるクリニックでした。
入口のドアを開けるのも怖くて、階段の踊り場で10分くらいまごついてましたが、予約の時間が来てしまったので意を決して院内へ。

第一印象は、存外普通のクリニックだな、という感じ。
待合室にヤバそうな人(言い方)がいるわけでもなく、特別変な設備があるわけでもなく。
受付も他の科と変わらない感じで、初診の問診を受けます。
ただ違うのは、ここで精神疾患に関する尺度を見るチェックシートにも記入すること。
ネットのメンタルヘルス系のサイトにサンプルがよく転がってるようなやつの紙版だと思っていただけるとわかりやすいかと。
で、とりあえず正直に記入したら、今度は臨床心理士によるカウンセリング。
パーソナルデータやら今の気持ちやら色々聞かれました。あらかじめこれをやっておくことで、診察に役立てる方針のようです。
(初診時のカウンセリングに関しては、クリニックによってやってたりやってなかったりみたいです)

それが終わると、いよいよドクターによる診察です。
といっても、発熱や痛み、外傷なんかの目に見える症状があるわけではないので、基本は自己申告になります。
症状とか辛いこととかを正直に話すと、とりあえずまずは抗不安薬(デパス)で様子を見ましょう、ということになり、診察終了。

初めての心療内科は、行く前に思っていたほど敷居の高い場所でも怖い所でもありませんでしたね。
だからといって気軽に行ける場所か、というとそうは思えませんけども……。

長期化する通院と騙し騙しの仕事

約1週間後、再び通院したのですが、ぶっちゃけデパスはほとんど効果がありませんでした。
そこで追加で出されたのがレクサプロ
いわゆる選択的セロトニン再取込阻害薬(SSRI)というやつ。抗うつ薬です。
こいつの効果が出てくるまでは最低でも1ヶ月くらいかかるということで、その間がまた精神的に辛いわけです。
とりあえずデパスに加えて、睡眠導入剤としてソラナックスを追加で投与しつつ凌ぐことに。
この途中でデパスの効き目がやはり薄いということで、毎食後の安定剤もソラナックスに変更になってます。

で、レクサプロを飲み始めて3ヶ月ほど経ち。
まあ全然良くならないわけですよ。
実際、このへんの2017年2月~6月くらいについては、はっきりした記憶がほとんどありません。
毎日死んだ魚の目をして仕事してたこと、雪が溶けても前の年は出来てた自転車通勤をする気力が全く湧かなかったこと、2週に1回ペースで心療内科に通ってたことくらい。
確かこのへんで母親に相談したんじゃなかったかなぁ。
見てておかしいなとは思ってたみたいですが、いざ話すとやっぱり泣かれました。うちの母親はすぐ泣くので。
あとゼリードリンクとカロリーメイトの箱買いでAmazonには相当お世話になりました。
そこで、レクサプロの補助として処方されたのがエビリファイ
本来は統合失調症への適用がメインの薬らしいのですが、こういう使い方もあるんだそうで。
この組み合わせで、ようやっと調子が若干マシになってきた感じがありました。
ちなみにこのあたりでソラナックスも効果が怪しくなってきたので、レキソタンに切り替えてます。
正直、3種類使った抗不安薬の中ではレキソタンが一番効いた気がします。

ここから、とりあえず症状を良くはないけどある程度安定させつつ仕事をする、という数カ月間を過ごしました。
だんだん出来なくなっていたことが少しずつ出来るようになってきたり、食欲も発症前と同レベルとまではいかなくても、徐々に食べられるように。
とはいえ、調子が最悪な日ももちろんあって、そういうときはもうどうしようもなかったですね。
職場では直属の上司(話のわかる人)にだけ相談して、あとは完全に黙ってたんですが、まあメンヘラになる前と比べると相当ミスは増えてました。
書類のタイプミスとか修正漏れの多発なんかはかわいい方で、客先に行く時に必要なものを忘れたり、手順ミスって二度手間になったり。
一番ヤバかったのは、車の運転中に一瞬頭のコントロールができなくなったのが2回あって、1回目は信号待ちしてる前の車と10cmくらいの距離でギリギリ停止、2回目は凍結路面でスピンして歩道の雪山に乗り上げる(幸運にも人的・物的被害ともに無し)というやつ。
あのときはなんかもう、危険な状況になると体が勝手に動く、ってのをリアルで体験したのが鮮明な記憶として残ってます。できればもうしたくないですけど。

そんなこんなで、収入を失うわけにもいかなかったので騙し騙し仕事を続けてましたが、2017年の秋以降、いよいよ社長のやり方にこれはもうついて行けんなと思わされる出来事が複数回あり、2018年の年明けになって、事情を伝えてあった上司に同席してもらって、自分の病状と退職の意向を伝えました。
そしたらなんか社長は辞めさせたくなかったらしく、薬は今すぐやめて自然療法に切り替えろだの言ってきたり、無理矢理伝手のあるクリニックにセカンドオピニオンに行かされたりと意味不明なことが色々ありましたが、セカンドオピニオンのほうでも無事うつ病と診断され、時期を見て退職という運びになりました。
なお、この頃は季節的なものもあったのか、状態が再び悪化傾向にあり、午前休を取る日も増えていました。
一応それを主治医に相談したところで、眠剤を何種類か試したのですが、大して効果が無かったのですぐやめてます。
で、気遣いなのか嫌がらせなのか知りませんけど(たぶん両方)、退職する前の1ヶ月は正社員だったところを時給が当時の最低賃金のバイトに降格変更。
(元々、時給にしたら最低賃金に毛が生えた程度の基本給を残業代でカバーしてたような感じだったんですけどね)
そのラスト1ヶ月で引き継ぎやら何やらをやって、予定通り退職。
あと、持っていたはずの有給休暇の権利は有耶無耶になりました。もう別にどうでもよかったんですけども。

退職後の回復

2018年の春の訪れとともに、晴れて無職になったわたしですが、さすがに辞めて1週間くらいは完全に引きこもってました。
1日の半分以上は寝てたんじゃないですかね。
でも2週間くらい経ったら、なんか急速に元気になってきたんですよ。
それこそ1年以上ほとんど乗ってなかった自転車でそのへんをポタリングできちゃうくらいに。
やはり仕事と人付き合いが悪影響として大きかったんですかね。
ちなみに、もうひとつふたつ、メンタルに結構なダメージを与えてる気がする要素はあるっちゃあるんですが、それはまた別の機会にでも。

その後もメンタル面の経過は順調で、徐々に薬の量を減らしつつ、6月頃から脱北京進出計画を本格的に考え始めたこともあり、8月上旬に心療内科の受診を終えました。
それからちょうど1年ほど経ちましたが、再発の不安はあるものの、なんとか東京で生きてます。

メンヘラになったらこれだけはやったほうがいい

精神疾患はこじらせて通院が長期化する可能性が高いので、必然的にクリニックの診療費に薬代も嵩んでくるわけです。
で、これはわたしの場合だったんですが、レクサプロがとにかく高い。クソ高い。
参考までに、レキソタン2mgの薬価が1錠あたり5.8円なんですが、レクサプロ10mgは驚異の1錠202.3円
2011年に国内で認可されたばかりの薬という事情もあるんですが、低賃金底辺労働者がまともに払ってたら喪黒福造の餌食になるようなもんです。
そこで哀れな貧乏メンヘラの救済措置として用意されているのが、自立支援医療制度
まあ区分はいくつかあるんですが、精神疾患での通院・投薬も対象となっていて、本人の年間収入金額にもよりますが、申請時に指定した医療機関調剤薬局での支払いに限り、月の医療費限度額を低く抑えてくれる社会福祉制度です。
わたしはこれのおかげで一月あたりの医療費がまともに払った金額の1/3~1/4くらいで済みました。
なお、申請には通院・利用している医療機関調剤薬局に書類を作ってもらう必要があるので、長く精神医療を受けてるけどまともに金払い続けてるぞ、って方は一度医療機関の受付か役所の福祉課あたりで相談してみるといいと思います。申請が通らなかったら知らんけど。
あ、あと確か指定できる医療機関と薬局はそれぞれ一箇所ずつですから、セカンドオピニオンにかかってるとかって方は可能なら金がかかるほうで申請したほうがいいでしょう。制度は1年で更新なんですが、受けてる期間中はやむを得ない理由が無い限り、指定した期間の変更ができなかった気がするので。

寛解してから困ったこと

鬱病は再発率が高いので、ガンとかと同じく治癒とは言わずに寛解って表現するらしいのでそうしますが。
症状が良くなったのはいいとして、いくつか困ったことがありました。

太った

たぶん薬の副作用。症状が出始めて食欲が消滅したときは短期間で一気に5kg以上減ったんですが、投薬が終わった頃にはその減った状態+9kg、元の体重からも4kgも増えてしまったという。人生で一番重くなりました。
その後、食事の調整とか色々して元の体重+1kgまで戻したけど、筋肉が落ちて代謝が下がってるので黙ってたら元に戻らなかったはず。

最大HP/最大MPが減った

最大HPは体力だからわかりやすいとして、MPは何だよって話なんですが、
簡単に言うと「体力的にも精神的にも、メンタルがやられる前に比べて相当弱った」という意味です。
最大HP(体力)は、運動してちゃんと食事を摂っていればわりと取り戻しやすいんですが、
どちらかといえば最大MP(精神力)のほうはかなり厄介だな、という実感です。
よくSNSなんかでは「困難な場面や精神的にやられる場面、人に気を使う時なんかにはMPを消費するからHPだけじゃなくてMPの回復も大事」みたいな文面を目にしますけど、
その許容量というか、すなわち最大MPが割合でいうとHP以上に下がってて、しかも最大値を上昇させるのが非常に難しい。
やらかす前は全然なんともなかったような場面でも、「えっこんな程度で精神的に来るんか…」な感じになること、相当多いです。
もちろん、個々人それぞれ元々の最大値から減少値、場面ごとの消費量まで差があるでしょうから一概には言えませんけども。
目下一番困ってるのは「最大MPを上げる方法」ですね。
これについては、「その人にとって気分のいいこと、リラックスできること、楽しいこと」なんかをやりつつ、かつ日常の中でMPを極力温存しなければならないので、なんかもう無理そうな気しかしないんですよね。
イメージとしては、MPが満タンの時にMP回復行動を取ることによって最大値がほんの少し上昇する、って感じかも。
なんかうまくやる方法があれば教えてください。マジで。

再発の恐怖と隣り合わせ

さっきもちらっと触れましたが、鬱病は再発率の高い疾病です。
そこで最大MPががっぱり減ってる状態。
正直、何がトリガーになってまたメンがヘラるか、自分でも予測がつきません。
対応策としては、些細なことでもいいので、極力ストレス要因を解消する、あるいは遠ざける、しか無さそうなんですが、
それをやると仕事というどこから攻撃を受けるか分からない戦場を離れることになり、その結果無収入になり死なので、
こればかりはもう再発を引き起こすような状況とエンカウント(しかも逃げられない)しないように祈るしかなさそうです。

マジで初動が大切です

メンヘラ無職という、なかなかの底辺まで落ちたなという経験を持つ立場から、今メンタル面でお悩みの方に僭越ながら助言をさせていただきますと、
本当に症状が軽いうちにどうにかできるなら、それが一番です。
1ヶ月くらい様子を見た挙句、最大のストレッサーだった職場から逃げもせずに1年以上我慢し続けた結果がこのザマですから。
まあ、こんな程度じゃ休めないって思っちゃうとか、収入が無くなると生活できないとか、事情が事情でどうにもできないことってあるんですよね。
でも、ちょっとでもヤバいかなって感じたら、その時点で心療内科の受診予約を取るくらいの感覚でもいいと思うんですよ。
一回行ったらジ・エンドとか、チャー研の精神病院みたいなそういう時代でもないですし、対応が早ければ早いほど治療期間も短く済む可能性が上がりますから。
別に心療内科の回し者ってわけではありませんけど、自分と似たような苦しみを味わう人が一人でも減ればいいなぁという、そんなお話でした。

なお、この記事を書いている現在

実はメンタルの不調が再発しかけてて、また薬のお世話になってます。
今回は反省を活かして初動対応を早くしましたが、果たしてどうなるやら。
ちなみに朝の4時にこんなのを書いてるのは、どうせ布団に入ってもしばらく眠れないし、明日休みだからもういいや、って感じだからです。